’18-03-07

おばあちゃんのこと

ある日、帰り際にふと振り返ったら
手を振ってくれた
初めてのことだった

おばあちゃんは、胸が痛むほどの悲しい表情をしていて
病室の出口からベッドの手すりへ戻って、また来るねと言った

それが私とおばあちゃんの最後だった

去年の9月の話

私はおばあちゃんの手がすきだったと思う

まだおばあちゃんが家にいたとき
私がおばあちゃんの手に
フタアミンという薬用クリームを塗っていた

おばあちゃんの手の皮は白くて薄かった
血行が良くなりますようにと思いながら
マッサージしていた

おばあちゃんは本をよく読む人で
短歌もつくっていた
新聞に作品が載って表彰されたこともある

私のつくる短歌は
きっとおばあちゃんの好みではないだろうな
でも、どこかで見てくれていたら嬉しいな

私が死んだあと自分の作品を披露したい人がまた増えた