おばあちゃんのこと
ある日、帰り際にふと振り返ったら
手を振ってくれた
初めてのことだった
おばあちゃんは、胸が痛むほどの悲しい表情をしていて
病室の出口からベッドの手すりへ戻って、また来るねと言った
それが私とおばあちゃんの最後だった
去年の9月の話
私はおばあちゃんの手がすきだったと思う
まだおばあちゃんが家にいたとき
私がおばあちゃんの手に
フタアミンという薬用クリームを塗っていた
おばあちゃんの手の皮は白くて薄かった
血行が良くなりますようにと思いながら
マッサージしていた
おばあちゃんは本をよく読む人で
短歌もつくっていた
新聞に作品が載って表彰されたこともある
私のつくる短歌は
きっとおばあちゃんの好みではないだろうな
でも、どこかで見てくれていたら嬉しいな
私が死んだあと自分の作品を披露したい人がまた増えた