掲載された雑誌の発売からかなり時間が経っているが、平岡直子さんの「回線」を読んだ。
私の感覚からすれば、現代火星人協会はかなり異様だ。
その協会に入会して入会金や年会費を納めなければ、貰えるはずの賞も貰えないのだという。そんなバカな! それも「けっこうな額」であるらしい。どうしたらそんなことになるの?
❝ それならはい、受けます、はい、と口にしてホットミルクの膜を思った ❞
(平岡直子「回線」・現代短歌91号2022年7月)
作中では結局、賞を与えられる代わりに提示される条件を呑んだようである。
牛乳を温めるとできる膜。飲もうとする口と牛乳の間に存在している膜。膜は牛乳を覆っている。口に一緒に入り込もうとする。飲みたいのは牛乳であり膜はいらないのだが。
読んでいてつらくなる一連だった。